大器遅満(大器満つること遅し)

  ※ 大器は満つるまでには、時間がかかるものである。まさに、「ローマは一
    日にして成らず」である。
    大きな仕事、大きな望みは、努力を積み重ねても日がかかるものである。
    では、どのくらいかかるのか? 『撓のひびき』(瀬尾謙一著)より転載
    してみよう。
    「かって南画壇の巨匠と仰がれた富岡鉄斎に、墨竹の画を教えてほしい
    と、たのんだ人があった。もちろん、年配、学識も相当の人であったろ
    う。これを承諾した鉄斎は、まずこれをお読みなさいと、数百種もある
    竹の種類をかいた和漢の書物数十冊をさずけたのである。その人は、鉄
    斎が早速、墨竹画の手本の一枚でも描いてくれるのかと、期待していた
    のが外ずされたのである。仕方なく、与えられた書物を辛抱して、数ヵ
    月かかって一読したが、それでは、おつぎはこれをといって、鉄斎は竹
    に関する和漢の詩文集をまた数十冊をさしだした。これではたまらぬと、
    その人は鉄斎の深い温かい配慮も、理解することができず、墨竹の画を
    学ぶのを断念して、ひきさがったという。」



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