やさしい税金・みじかな税金 アラカルト
身近な税金知識をできるだけ平易なことばで紹介しています。
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やさしい税金・みじかな税金 アラカルト25
生命保険の満期金・解約返戻金にかかる税金
生命保険金の受け取り(死亡保険金・満期金・解約返戻金)にかかる税金を考えます。今回は契約者が個人の場合に限定して解説します。
〔被保険者の死亡により受け取る保険金〕
1 契約者と被保険者が同じ場合は、所得税ではなく、相続税の対象になります。
この場合、法定相続人一人当たり500万円の非課税ワクがあり、これを超えた金額が
相続税の対象です。
2 契約者と受取人が同じだが、被保険者が異なる場合 → 一時所得(所得税)
* こういう契約はできる限り避けましょう!
3 契約者と被保険者、受取人がすべて異なる場合 → 贈与税
* このような契約をしてはいけません!
〔保険金の満期にかかる税金〕
1 契約者と満期金受取人が同じ場合 → 一時所得の対象です。
一時所得の課税は次のとおり
{満期保険金ー払い込み保険料ー50万円(一時所得特別控除)}×1/2=課税対象
課税対象金額がマイナスの場合は他の所得と通算できません。
2 具体的に数字を当てはめて考えてみましょう。=実例=
・満期保険金 4,213,540円
・支払った保険料 4,596,560円
・これを計算式に当てはめると
(4,213,540 ー 4,596,560 - 500,000)× 1/2 ⇒ △383,020円
マイナスになるため税金はかかりません。また他の所得から控除することは
できません。
3 2の事例で満期保険金が6,213,540円だった場合だと次のとおりになります。
・(6,213,540 - 4,596,560 - 500,000)× 1/2 = 558,490円
となり、558,490円が所得税の対象となり、他の所得に加えて、総合課税となります。
4 契約者と受取人が違う場合は、大変な税金(贈与税の対象)になります。
・上記2例の税金を計算してみると
4,213,540円 → 贈与税 372,600円
6,213,540円 → 〃 883,900円
こういう契約をしてはいけないことがお分かりになるでしょう。
5 解約返戻金については、満期受け取りとまったく同様です。
〔契約者を変更するとどのようになるか?〕
契約者と受取人が異なっていれば、大変な税負担になることがわかりました。
そこで、これを避けるために、満期金等を受け取る前に受取人を変更すればどうなるのでしょう。
1 受取人を契約者に一致させる場合は、まったく問題は生じません。
2 逆に契約者を変更して、受取人に一致させた場合は、これまで支払ってきた保険料が
問題になります。
具体的には、契約者変更時の解約返戻金相当額について贈与があったと解されます。
したがって、贈与税の対象です。金額によっては慎重な対策が必要です。
〔リビングニーズ特約の給付金受領〕
1 リビングニーズ特約とは、概要、次のとおりです。
・被保険者の余命が6ヵ月以内と診断された場合に、主契約の死亡保険金の一部または
全部を生前給付金として支払う。
・生前給付金を支払ったときは、これと同額の死亡保険金が減額される。
・生前給付金の受取人は、被保険者とし、配偶者について指定代理請求を認める。
・特約の保険料は不要である。
2 重度の疾病に起因して支払われる保険に該当するものとして、非課税です。
〔特殊事案〕
外資系某生保から提案(実行)された事案です。こんなことが認められるのかなぁ〜と思わざるを得ません。
「やさしい税金 みじかな税金」にはふさわしくありませんが、「プロ」の方への問題提起・警鐘として掲げます。
1 法人が契約した。全額掛け捨て保険である。
毎年の掛け金は 10,921,300円
これを3年間掛けてきた。掛け金総額 32,763,900円
2 4年目になって、会社の経営が思わしくなく、掛け金を負担するのが困難である。
解約を検討したところ、
解約返戻金は 5,839,000円である。
3 これではもったいないので、社長を契約者に変更することとし、解約返戻金相当額を
社長から、会社に支払った。
金額は、5,839,000円
4 契約者を社長個人に切り替えたところで、社長は4年度分の保険料10,921,300円を支払った。
----------ここまで実行済み----------
5 5年目、1年経過した時点で、この保険を解約する予定である。
このときの解約返戻金は、39,824,000円となるという。
6 社長の所得は実質次のとおりとなる。
解約保険金受取額 39,824,000円
払込金(会社へ) 5,839,000円
同 (生保へ) 10,921,000円
差し引き 23,064,000円
7 このときの税金は次のとおりとなる。
受け取り保険金 保険料払込金(会社払込金を含む) 課税所得
(39,824,000 - 43,685,200 - 500,000)×1/2 =0
はたして、これが認められるか?
認められるとする根拠を掲載しておきます。
「保険料は本人負担分だけでなく全額控除可能と控訴審も判断」
契約者と被保険者が2分の1ずつ支払った養老保険の保険金の全額を一時所得の金額の計算上控除し得る「収入を得るために支出した金額」に当たるか否かの判断が争われた事件で、福岡高裁(森野俊彦裁判長)は原審の判断を支持して保険料全額が控除し得るために支出した金額に当たると判示、課税当局側の主張を斥ける判決を言い渡した。
この事件は、契約者を会社、被保険者を代表者等その家族、受取人を代表者等とし、会社と代表者らが保険料を各2分の1ずつ負担した養老保険契約に基づいて満期保険金を受領した代表者等が、会社の負担した保険料も含めた保険料全額を一時所得の金額の計算上控除し得る「収入を得るために支出した金額」に当たると考えて、所得税の確定申告をしたことが発端になったもの。
しかし原処分庁が、会社負担の2分の1の保険料は「収入を得るために支出した金額」には当たらないと否認、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、その取消しを求めて提訴したところ、原審が納税者の主張を全面的に認容したところから、原処分庁が控訴、原審判決の取り消しを求めていたという事案だ。
これに対して控訴審は、養老保険契約に基づく満期返戻金が一時所得とされる場合に、その一時所得の金額の計算上控除される保険料等は、その一時所得を取得した者自身が負担したものに限られるのか、それともその養老保険等の受給者以外の者が負担していたものも含まれるのか所得税法第34条2項からは必ずしも明らかでないと指摘。しかし、同施行令183条2項2号が生命保険契約に基づく一時金が一時所得となる場合、保険料等の総額が控除できると定めており、同文言を素直に読むと所得者本人負担分に限らず保険料全額を控除できると解釈せざるを得ないと判示、課税当局の主張を全面的に斥けている。
(2009.7.9 福岡高裁判決、平成21年(行コ)第11号)
やさしい税金・みじかな税金 アラカルト24
死因贈与
このところ「死因贈与」に取り組むことが多くなっているので、今回はこれをまとめてご紹介しよう。
死因贈与は贈与の形式をとっているが、贈与者の死亡を原因として贈与が成立するので、税法ではみなし相続税の対象となります。贈与税と相続税ではとんでもない違いですから、ご留意ください。
例えば、2,000万円の場合 贈与税なら720万円
相続税なら、5000万円プラス相続人1人1000万円までゼロ
後は相続財産の多寡にによって変わってくるが、H元首相クラスでない限り相当低いのは明らかです。
遺贈は「私が死んだら財産をあげる」ことであり、いわゆる遺言であり、私書遺言か、公正証書遺言がこれにあたる。つまり遺言は相続人の一方通行です。
これに対し、死因贈与は「私が死んだら財産をあげます」とともに受贈者が「もらいます」という受諾により成立します。つまり一方通行ではありません。
では、どのように違うのでしょうか。
いずれもみなし相続財産となり、両者間の相違はありません。
ただ、不動産取得税(府県民税)の取扱いは異なり、遺言による取得は非課税であるのに対し、死因贈与による取得は課税となります。
遺言には、私書遺言と公正証書遺言があります。
本稿では遺言について述べることを趣旨としていないので、ここで触れませんが、遺言書を書くのは一定のルールのもとに記さねばならず、なかなか大変だという思いが強く、また、公正証書遺言を作成する場合は、委任状による代理は不可で、公証人の前で本人が口述することが求められ、2人の身元保証人の同席が必要となります。
このため、高齢者にはどうも敷居が高くなっているようです。
そこで死因贈与ならどうか、ということになります。
死因贈与契約死因贈与契約は、必ずしも公正証書にしなくてもよく私書契約でもよいが、最近、法務局の取扱いが厳密性を求めているので、公正証書によることが望ましい、と伝わっています。
〔死因贈与契約の注意事項〕
1 死因贈与契約を締結した場合、当事者の印鑑証明は付しておくこと。
印鑑証明が付されていない場合は、所有権の移転にあたって、相続人全員の同意が必要に
なります。
印鑑証明の有効期限は、契約書締結時に有効であればよろしい。
2 死因贈与契約書には、「確定日付」をもらっておくこと。
相続人から疑義が提起された場合、受贈者は実証責任は負わなければならないから、
「確定日付」は大切に考えておきましょう。
3 死因贈与契約には、その契約を執行するべき者(執行人)を指定しておくこと。
執行人の指定がない場合、所有権の移転にあたって、相続人全員の同意が必要となります。
4 受贈者が先に死亡している場合、受贈者に代わって受け取るべき者(代襲者として)を指定
したいときは、その者も契約書に署名押印し、印鑑証明を付しておくこと。
これがなされていない場合には、無効になる恐れがあります。
1 契約者本人が出向く場合、印鑑証明と身分証明(免許書など)を持参すること。
2 贈与者・受贈者に代わって受任者が行う場合には、私書による死因贈与契約書を締結し、
これに公証人宛の委任状をセットして割り印したものを持参すればよい。
ⅰ 委任状には「別紙、死因贈与契約書の締結に関する補正、修正を含む一切の件」と記して
おけばよい。
ⅱ どちらも代理で行う場合、双方代理はできないので、それぞれの代理が必要となります。
ⅲ 持参するもの
・関係者の印鑑証明
・不動産の内容を明らかにする登記簿謄本等(写しでも可)
・同上 評価額の分かるもの(固定資産評価証明か固定資産税の納付書等)
・執行人が先に死亡している場合、変わるべき執行人を指定しているときは、その者の
住所を明らかにする書面(免許書写し等)
ⅳ 公証人に支払う報酬
報酬規定によります。参考5000万円…3万円程度
死因贈与により不動産の所有権移転を行う場合には、贈与者の持っていた権利書が必要です。死亡された場合、「権利書は紙切れになった」と思い込むのは間違いです。
権利書を喪失している場合は、保証書の発行を求めなければなりませんが、これは執行人に対する保証ですので、相続人の同意を必要とするものではありません。
贈与者は最終意思を尊重するという理由により、贈与者は自由に死因贈与を撤回することができることとされています。ただし、負担付死因贈与で、その負担が履行されている場合には、特別の事情がなければ取り消せないことになります。
これでは、受贈者は安心できないことも考えられます。そのような場合は、「死因贈与契約による仮登記」をつけておけばよいでしょう。
死因贈与契約の実行に当たっては、当事務所にご相談いただくか、私書契約でご自身がされる場合は、精査のうえ実行いただくようお断りしておきます。
やさしい税金・みじかな税金 アラカルト23
たな卸資産の評価損・廃棄損の取扱い
たな卸資産が流行遅れやたなざらし、環境の変化等により売却することが困難になったり、通常価格で売却することが困難となった場合について考えてみましょう。
〔不良品の廃棄損〕商品価値を失った在庫については、実際に廃棄することを条件にその廃棄した日を含む年度の損金として処理することができます。
処分にあたっては、その処分する商品を写真で撮り、かつ、処分に要した費用の領収書等をセットで残しておくと疑義が残らないのでよいでしょう。
処分する商品の範囲は、税法でも、会計でもまったく規定がありません。すべて企業の判断にゆだねられます。
上記のように、基本的には実際に処分した日の属する年度の損金ですが、社内規定などに基づき決算手続き中に処分した場合であっても認められると考えられますが、金額が大きい場合など疑義が残り、いらぬトラブル要因となりますので、やはり決算までに処分しておくことがベターでしょう。
〔たな卸資産の評価損〕税法では、資産の評価損は原則として認めていませんが、
1 たな卸資産が災害により著しく損傷したこと
2 著しく陳腐化したこと
3 会社更生法等により評価替えをする必要があること
4 これらに準ずる事実がある場合
には、その商品の「時価」によって評価することができます。この場合の時価とは、処分可能価格ということになります。
直前、直後にいわゆる通常価格で販売している場合には、評価損は認められないでしょう。
まったく売却不可能であるが、処分するには耐え難い場合や、「処分するのにその時価相当額よりコストがかかるものにあっては、備忘価格1円により評価することができます。
この場合、たった1円だからといって、たな卸明細から除外してしまってはいけません。たな卸明細に記載の上、堂々と1円により評価することが肝要です。
在庫商品が管理の不備や盗難などにより消失した場合には、その消失した年度の損失として処理することになります。
詳しくは、当事務所にお尋ねください。
やさしい税金・みじかな税金 アラカルト22
ご存知ですか?「サビ残ビジネス」
今回は税法を離れて、今ひそかに浸透して企業を震え上がらせている「サビ残ビジネス」を取り上げてみます。
サビ残 → サービス残業
消費者ローンの利息の過払い請求はテレビCMにまで登場する加熱振りだが、これを手掛ける弁護士、司法書士らが、これに代わる新たなビジネスとして「サビ残」に目を向けたと報じられている。
そもそも労働争議(労働審判)が持ち上がれば企業側に勝ち目はほとんどなく、早期解決を図るためには金銭解決しかないようである。仮に企業側の言い分がすべて通ったとしても応訴するための弁護士費用や労力的・時間的ロスは計り知れない。
なんとしても避けなければならない問題であろう。
問題の発端は次のようなケースである。
企業と社員の間でトラブルになった(どちらの言い分が正当であるかを問わない)。社員から「今までのサービス残業代を支払って欲しい」といってきた。企業側は「そんなもの払えるわけないやろ。給料で調整してきた」とつっぱなた。
これに対し、社員は弁護士を立ててサービス残業分を支払えといってくる訳である。
典型的な「サビ残」紛争である。
これに目をつけたのが「サビ残ビジネス」である。
弁護士が労基法を持ち出してくれば、労基法に従った最終判断によることになる。
労基法では、サビ残に相当する金額とともに「付加金を加えて支払う義務」が規定されている。
労基法第114条「裁判所は労働者の請求により最大で2年分の未払い賃金のほか、これと同一額の付加金の支払いを命ずることができる」
つまり、サビ残額の2倍を要求されることになる。時効は2年。
怖ろしいのは、これを手掛ける弁護士、司法書士が掘り起こしてビジネスチャンスにしようとする動きである。
問題の解決方法であるが、極めて難しいといわざるを得ない。常識の時間なら許容範囲であろうと考えがちだが、これは怪しい。一旦トラブルになれば、そのような考え方は吹っ飛んでしまうだろう。
労基法、就業規則、労働契約のシバリがすべてである。
この機会に、チェックしておかれることをお勧めしておく。
根本的な問題解決ではないかもしれないが、社員から退職の申し出があれが、必ず書面で受取り、円満退職であることを強調しておくこと。企業側から退職干渉(内容には十分の配慮を)をし、同意を得たなら、これも同意した旨を書面にしておくことをお勧めする。くれぐれも、退職届を受け取る前に、これまでの勤務に対する不満を言って叱ったりしてはいけない。たとえ、社員の勤務態度が100%悪いとしてもである。
理由はいとも簡単。叱られた社員は、腹いせに労働争議に持ち込むからである。
サビ残を掘り起こしてまでもビジネスチャンスにしようという動きがあることを押えておきたい。
「サビ残」ではないが、最近の事例を紹介して、労働争議の恐ろしさを知っていただこう。
社員の態度が良くない。会社の方針にも背を向けている。社長の指示にも素直に従わない。お得意さんとの応対もぞんざいで気になる。
訓戒・けん責と続いたが改善される様子もなく目に余ったのであろう。社長が切れたのである。
社長「お前は首や! 明日から来んでもいい!」
社員「どうしてですか! 理由を言ってください!」
社長「理由はワシが首やていうたからや。ワシの言うたことがすべてや!」
この結果はどのようになったか。
社員は弁護士を立てて労働調停を申し出たのである。
経過はすべて省略するが、企業側の全面敗訴。400万円の支払いで示談をするしか対処のしようがなかったのである。
馬鹿げている、といってもこれが事実なのです。
教訓
トップは労働紛争に切れてはいけない!!
やさしい税金・みじかな税金 アラカルト 21
親子間の土地の貸し借り
一般的に土地の貸借は金銭の授受を伴うことになりますが、親子間の貸借はどうなのかを考えてみることにします。
具体的な事例としては
1 親の所有する土地に、子どもが自宅を新築する
2 親の所有する土地に、子どもがその土地を利用して事業を行う場合
が、それにあたります。
以下、それぞれについて考えてみます。
I 親の所有する土地に子どもが自宅を新築する場合
通常、土地の上に構築物を建てる場合、土地の所有者の利用が著しく制限されることから、権利金などの一時金を支払う(借地権設定対価)ことになるが、親子間の場合はこの金銭授受を行わなくてもよろしい。
これによって、いわゆる借地権相当額の贈与を心配をする向きがあるが、まったく心配するに及ばない。
この考え方は、義理の関係(つまり子どもの配偶者等)にも適用される。
このような金銭の授受を伴わない貸借関係を「使用貸借」というが、将来、相続が生じたとき、その土地は貸宅地ではなく、自用地として扱われ、相続税における課税価格の算定に、貸宅地の評価減は行えません。
*なお、子どもの主宰する企業といえども、法人が絡むとまったく違った取扱いになるのでご注意を!
II 親の所有する土地を子どもが借りて、事業を行う
この場合「無償」か「有償」、また「同居」か「非同居」によって、取扱いが異なってきます。
〈同居・有償の場合〉
「生計を一にする親族に家賃、借入金の利子などを支払っても、その支払った金額は原則として必要経費に算入できない」の規定により、当該事業の経費にすることができません。その代わり、所有者に帰する固定資産税や減価償却費、その他その不動産の取得にかかる借入金利息などは、事業主自身の費用とみなして経費にすることができます。
この場合において、有償として授受した賃貸料(妥当な金額)については、贈与税の対象になる事はありません。
〈同居・無償の場合〉
同居・有償の場合と同様です。経費の取り扱いも同じ。
〈非同居・有償の場合〉
第3者間の賃貸借と同様の取扱いで、特に問題とするところはありません。
〈非同居・無償の場合〉
特に問題点はありません。同居・有償の場合と同様、所有者に帰する固定資産税等を経費にすることができます。
以上が基本的な考え方です。
次に親から無償で借りた土地等を活用して、事業を行う場合を考えてみましょう。
例えば、親の所有する土地を無償で借り受けて、子どもが駐車場経営を行った場合はどのようになるでしょうか?
駐車場の管理経営の実態によって異なると考えられます。
1 借り受けた土地等をそのまま第三者に転貸ししているような場合は、
実質所得者課税の原則から、土地の所有者の所得となり、
2 借り受けた土地を事業規模で行っている場合は、子どもの所得と考えてよいでしょう。
III 事例研究
当事務所では、次のような事例を取り扱ったことがあります。参考に供します。
まず、関係図

1 父Bは既に死亡されていた。
祖父Aが逝去され、相続が生じ、子Dがすべて代襲相続されることになった。
この中に、借家がある。この借家について考えてみる。
2 子Dは借家から生じる家賃収入を母Cに譲り、生活費に充てて欲しいと考えている。
母Cは子Dの配偶者Eに浪費グセがあり、すべてを子DにしてしまうとEの思いのままで
処分されてしまうことが心配だ。
母Cと子Dの思いは一致しており「母の存命中はその借家から生じる家賃収入を
すべて母Cにもらって欲しい(もらっておきたい)」で合意している。
3 当事務所からの提案は次のとおり
・当該借家の相続権は子Dしかない。
・そこで、子Dは相続した当該借家のうわもの、つまり「家屋」だけを母Cに贈与する。
土地を贈与すると相当の贈与税がかかるが、家屋だけなら贈与税はゼロ。
・贈与契約書に母Cと子Dの特約条項を結ぶ。
「当該土地家屋から生じる家賃収入については、母Cが存命中は全額Cの所得とし
Dは一切の権利を主張しない。」
はたして、これが認められるか?
この提案を実行してのが既に10年前。何の問題もなく進められている事は確かに事実であります。
やさしい税金 みじかな税金 アラカルト 20
個人間の金銭貸借の税務
今回は個人と個人(多くの場合、親子間)の金銭貸借の税務をみていきましょう。
単に税務だけから見るのではなく、少し話題提供といったことを含めてみました。
〔ある時払いの催促なしはダメ!〕
親子間で金銭貸借をする場合、よくあるのが「使っておきなさい。返済は余裕のできたときでいいから〜」と気楽に行うことが多いようだが、税務ではこれはいけない。特に子どもが自宅を購入する場合に多い、いわゆる「ある時払いの催促なし」という金銭のやり取りは、税法では贈与として取り扱うことになる。
ご存知のことと思うが、贈与税はきわめて高い税金となる。
贈与税率(基本的には基礎控除110万円を差し引いた金額にかかる)
| 200万円以下 | 10% |
| 200万円超300万円以下 | 15% |
| 300万円超400万円以下 | 20% |
| 400万円超600万円以下 | 30% |
| 600万円超1000万円以下 | 40% |
| 1000万円超 | 50% |
贈与額 | 贈与税 | 無申告加算税 | 延滞税 | |
|---|---|---|---|---|
| 2003年度 | 15000万 | 7220万 | 1083万 | 310万(概算) |
| 2004年度 | 〃 | 〃 | 〃 | 310万 |
| 2005年度 | 〃 | 〃 | 〃 | 310万 |
| 2006年度 | 〃 | 〃 | 〃 | 310万 |
| 2007年度 | 〃 | 〃 | 〃 | 310万 |
| 2008年度 | 〃 | 〃 | 〃 | 310万 |
| 合計 | 90000万円 | 43320万円 | 6498万円 | 1860万円 |
| 総合計 | 51,678万円ととんでもない金額になる。 | |||
少し余談になるが、誰がこの贈与税の納付義務者になるかについて触れておこう。
当たり前のこととして、納付義務者は贈与を受けた鳩山首相である。
ところが、鳩山首相が受贈で得たものを使い切ってしまっていて、納付する能力がなくなっているときはどうなるか?である。
この場合、「連帯納付の義務」という規定がある。
具体的に、財産を贈与した者(この場合、母親)は、贈与した金額の範囲内において、その贈与にかかる贈与税について、連帯納付の義務がある、というわけである。
鳩山首相の場合、もし既に使い切って納付する余力がなければ、母親に納付義務が発生するのである。もっとも求償権が残されるのは当然である。
〔贈与税を回避するために!〕
贈与税の基礎控除は年110万円である。2人以上の方から贈与されるとその合計で判断する。つまり、毎年110万円の贈与なら、贈与税はゼロであり、申告も不要である。ハッキリした根拠を残しておくことが肝要であるが、そのために取られるのが、111万円を贈与して申告を行い、1000円の贈与税を納めておく手法である。1000円の納付で「証明書」として活用しようとする方法であり、合理的といえよう。
〔金銭消費貸借契約書を作成しましょう!〕
先に記したように「ある時払いの催促なし」と解されて、贈与税がかかることになれば大変、金銭消費貸借契約書を作成しておきましょう。親子間で〈水臭い〉などと言っていることではありません。この場合の注意事項
・金額、返済方法、金利、契約日の記載
・返済金額が収入と照らし合わせて、ムリがないこと。例えば、収入(手取り)30万円で、金融機関への返済が10万円の場合、毎月10万円の返済とすれば、残りは10万円となる。10万円で通常の生活ができるか、と問われることになる。
・対処方法としては、生活が成立つ返済金額にすること。据え置き期間を設け、返済を一定期間行った後、残金を一括返済とするなど、実際にあった工夫を取り入れればよいだろう。
・契約書には、できる限り「確定日付」と取っておかれることをお勧めする。
〔相続時精算課税の活用〕
「ある時払いの催促なし」が、「年を取ったとき、面倒をみてくれるように〜」という願いが込められている実質的贈与であるなら、「相続時精算課税」を検討されるのがよいだろう。
「相続時精算課税」は、その言葉のとおり、親が亡くなった場合、その相続時に当該金額を相続税の課税価格に上乗せして、精算しようというものである。
相続時精算課税の概要は次のとおり
・贈与者は65歳以上(1月1日現在)の親
・受贈者は20歳以上の子(または代襲相続の対象となる孫)
・父または母のそれぞれから2500万円までの贈与に対し、贈与税を猶予する。
相続税の基礎控除は「5000万円+1000万円×相続人数」
・「相続時精算課税」を選択する場合、相続税と考え合わせながら判断することになる。
・相続時精算課税を選択した場合、翌年以降も継続しなければならず、途中での変更はできない。つまり、2500万円の猶予は1回(1年)切りではなく、累積で捉えていくことになる。
・相続税がかからないようなら、相続時において特に精算するための申告をする必要がなく、なんら手続する事はいらない。
〔相続時精算課税と住宅取得資金の贈与にかかる非課税措置の合わせワザ〕
平成21年1月1日から22年12月31日の間に、20歳以上の子が自宅を購入する場合、相続時精算課税を選択とあわせて、一定の要件のもとに、1000万円の住宅資金特別控除を上乗せすることができる。
先の贈与者の年齢65歳以上の要件がここでは外れている。
・一定の要件とは、取得する自宅を実際に住まいする日(原則として翌年3月15日までに)
・購入する自宅の平米数(50平米以上)
・中古住宅の場合は築20年以内
など詳細な規定があるので、適用に当たっては十分確認いただきたい。
次回は、親子間の不動産の賃貸借契約を考えてみる予定。
2010.1.1 記
