HOMEトピックス税務と会計座右の銘百選エッセイ集ウォルドルフ人形サクセス・シミュレーション連珠リンク

「連珠を世界に!」ロマンの旅 15

国際普及の旅 オランダの巻 1986

このレポートは、前回に報告したスウェーデン訪問に先立ち訪れたオランダとの交流記である。要約して報告しようとしたのだが、今思い返しても心の震えを抑え得ない。カットする手段がどうしても見当たらないので、当時執筆していた『夕刊フジ』のレポート(4回分)をそのまま掲載することにした。
国際普及にあたって我々が求めてきたロマンを感じ取っていただければ幸いである。

“RENJU”を世界に! オランダ編

夕刊フジ「連珠を世界に!」 本欄で幾度か取り上げさせていただいている筆者の果てしない夢である。ルールを知ったその日から楽しめるゲームでありながら、汲めどつきない奥行き。いまわが国に求められている心の交流に大きな役割を果たすといえばいいすぎだろうか。思えば、ソビエトのサプロノフさんに指導したのが、筆者が国際普及にのり出すきっかけになったのだが、もう10年にもなる。そのソビエトでは、いまや愛好者3000人とも4000人とも伝えられ、都市対抗までやられているという。昨年9月、モスクワ行きを計画し、メンバーで合宿までもったが、途中から連絡が途絶えて実現しなかった。残念なことであった。

その点、スウェーデンは気楽である。パスポートさえあれば、自由に行動できるし、環境がすこぶる美しいうえ、人柄がなんとも魅力的。今回が3度目だが、行く度に好きになっていく。
今週はその前の訪問国、オランダ編をお届けしよう。

2年前、初めて交流したが、直後に日本連珠社オランダ支部が誕生した。しかし残念ながら、軌道にのせることができず、私どもに支援要請がなされていた。
リーダーはブロマーさん。アメリカに渡り心理学の研究をしたが今なお納得したものが得られないと研究を続ける心理学者。41歳。局面、連珠の対局をよく心得ている打ち方であるが、黒9では16と広く打ちたい。

魅力的なブロマーさん

夕刊フジブロマーさんの人間的魅力は大変なものである。わが方の最も若いメンバーである河村典彦四段(21歳、京大4年)は「何年も前に大学を卒業されているが、真の心理学、人間のための心理学を勉強しているようで、いろいろ困難にもめげず、がんばっておられるようだ。あまりよく分からなかったが、日本人のゲームの姿勢をほめてくれた。とても感動した」という。

西園典生四段(29歳、SE)も彼の魅力にまいったひとり。西園四段のもうひとつの目的は、オランダで親しまれている音楽の採譜にあったが、ブロマーさんがこれまた音楽の大ファンであった。アムステルダムでは楽器店をめぐり、ユトレヒトでは歌の交換レッスン。「もう最高!」と西園四段をしびれさせた。

かくいう筆者もブロマーさんの大ファン。実は筆者の今回のもうひとつの目的は、イデオロギーの研究(たいそうな命題がついているが、心のふれあいについて)においていた。彼が優秀な心理学者であり、かつ、真の心理学、人間のための心理学を求めている人であったとは何と嬉しいことであろう。
こんな人に連珠を愛してもらえるのは幸せである。オランダにも連珠の広がりを見る日がそう遠くないことを確信した次第。

白18から、あっという間に白の模様が拡大した。局面によっては華麗に勝つことも必要だし、力でネジ伏せることも必要である。普及のためには不可欠な要素であるといってよいだろう。

オランダ将棋の“王将”と再会

夕刊フジオランダ滞在中、オランダ将棋チャンピオンのスタウテンさん(23歳、化学技士)にすべてのスケジュールをたててもらった。将棋のチャンピオンがなぜ?と奇異に思われるかもしれないが、彼らからみれば、どちらも日本のゲーム、違和感がないのである。

日本人そっくりのローカスさんを我々は“岩さん”(ローカスは岩という意味)と呼んで親しくなり、将棋を始めて4ヶ月でたちまち二段の実力をつけ始めているという19歳のグリンメルヘン君からは将棋の挑戦を受けたりもしたものである。

連珠の方は、2日とも総当りをしようということになり、アムステルダムでは15対0、ユトレヒトでは20対0で完封したが、彼らの連珠への関心は一気に高まったのである。日本流に解釈すると不思議かもしれないが、私どもはこれが奥行きのあるゲームを示す最善の方法であることを知っている。
はたして、2年後にはスウェーデン人を交えて、3ヶ国で親善戦をやろうというところまで話が弾み、日本ショップを営むヒニール・スペールマンさんから会場の提供を申し出ていただいた。楽しみである。

局面、23歳の若い教諭であるルフトさんの好ファイト。黒9を10とヒク勇気があれば、地力はグンと向上する。しかし全般的には黒はよく打っている。

2年後に3ヶ国親善戦を!

夕刊フジルフト「私の日本のゲームの興味は、連珠と将棋です。そして私は連珠で日本にたくさんの友達に勝ちたいと思っています」
2年前、ブロマーさんから「われわれのほとんどは、あなた方の友情に好感を得た。囲碁の先生は神のごとく振る舞い、将棋の先生は英雄のようであったが、連珠の先生は、本当に人間としてやってきた」という便りをいただいて、感動したことを鮮明に思い出す。私は国際普及にあっては、“友達”でありたいと願っている。しかし、今はルフトさんの期待に応じて負けるわけには行かない。

本局、新A級棋士・河村四段が胸を貸している感じであるが、黒もよく打っている。
黒31は正着。反対に止めると三々禁にハマル。よくヨンで防いでいる証拠であろう。
白34が好手。一見なんでもない手のようであるが、鮮やかな決め手であった。

白46からイロハニの四追いでX点を四々禁にハメて白の勝ち。このように、禁手を巧みに使った攻めを試みると、日本では「なあんだ、きたない」ということになることが多いが、諸外国では「なるほど、そんな攻めがあるのか」と感嘆しきりであることが多い。

オランダ編をもっと記したいのであるが、紙面の都合もある。3年後に日本、スウェーデン、オランダの3ヶ国親善対抗戦が行われていることを祈念して、スウェーデンに渡ろうと思う。

本稿は1986年8月『夕刊フジ』紙に連載されたものです。